…馬鹿の一つ覚えの様に、一方通行系です。もう、いい加減、飽きました、よ、ね(こそこそ)
好きなんです、このパターン。すみません。
でも、初めて景陽らしいものになった気がする。(私的にですけど)
しかぁ〜し、このおまけで、凄い物を拾う事になるとは。私、感動で咽び泣きです。
これをAlbatross様に投稿時、絶妙のタイミングであちらのお絵かき掲示板で、夜紅虫様の景麒イラストが
投稿されたのです。それが又、妙にこの話に雰囲気が合っているんです。
当然、全く示し合わせた訳ではございません。そんな恐れ多い事、出来る訳ない、ない。
それから、翠玉様・夜紅虫様からのご好意によってそれが挿絵となりました。
こちらにはございませんが、ご覧になりたい方は「Albatross」様「燈虫花想」様に掲載されておりますので、
リンク集から行ってみていただき、その切なくも美しい美青年景麒に悶えて下さいませ。
では、皆様、本当に有難うございました。
←その一押しが励みになります
2004.11.初稿
素材提供 ぐらん・ふくや・かふぇ さま
禁無断転写
おまけ 景麒→陽子
景麒はこの非常事態に何やってるのよ、この、役たた…(以下強制終了)
と、思われた方。実は、景麒の行動も考えていました。
しかし、本編に入れると、浩陽から離れてしまいそうだったので、切取りました。
これを「おまけ」にします。読んで下さった方に感謝を込めて。
設定は中盤の、陽子が水禺刀を見終わった辺りと思って下さい。
「主上、宜しいでしょうか」
扉の向こうで、景麒が陽子を伺う。
「ああ、いいよ」
陽子は水禺刀を片付けると、景麒に返事をした。
長い沈黙の後、景麒はやっと一言、言う事が出来た。
「・・・お加減は、如何でしょうか・・・」
陽子はどう答えていいか分からなかった。
景麒も自分の言葉が、ひどく馬鹿馬鹿しいものに思えて仕方がなかった。
何かをせずにはいられなかった。
傍にいなければいけないと思った。いや、傍にいたいと心から思った。
景麒がおずおずと陽子の傍へ近付いた。そして、自身の懐へ、陽子の細い肩を抱き寄せた。
陽子は景麒にすべてを預けた。
何も言わず景麒は、陽子の頭を丁寧に丁寧に撫でた。
そうする内、景麒はそれだけでは足りない気がしてきた。
「もっと深くあなたを、お慰めしたい。あなたの受けた傷をすべて舐めとって差し上げ
たい」
景麒は抱きしめた腕を緩めると、腰をかがめ、丁度立ち膝をつく体制をとった。
そして、無言で見つめる陽子の手をとり、それに口付けた。
陽子が拒否しない事を感じた景麒は、そのまま立ち上がると、陽子の顎を上向かせ、もう
片方の指先で陽子の唇に触れた。
こっくりした深みのある紅が、景麒の白い指先に滲んでいく。
すると、陽子が口を開いた。
「・・・あっ・・・ちょっと・・・景麒・・・待って・・・」
言われて景麒は形の整った美しい眉を、僅かに歪ませた。
陽子は目を泳がせ、二三歩下がり、己の紅で染めてしまった、景麒の指先を見つめる。
気まずい雰囲気が二人を包む。
『その透き通る様な肌を、私は汚せないだろ?』
「えっと・・・ごめん。その・・・無理・・・しなくて、いいよ。お前は、そういう事は
嫌いだろ?」
陽子が何を言っているのか分からなかった。
「・・・・・・」
理解出来なかったので、景麒が黙っていると、陽子はそれを肯定ととったらしい。
自嘲する様な薄笑いを浮かべる。
「嫌いだよな。一時の快楽に縋る私など、我慢ならないだろう。こんな所誰かが見たら、
今度は《麒麟との情事に耽る女王》とも、言われかねないものな。・・・その、心配
させてごめん」
景麒の身体に、雷に打たれた様な衝撃が走った。
『私が過去にした事は、なんと愚かな事だったのか!私が望んでそうしたかったのに。
気付けば、私はそうする事を許せない者と、あなたに印象付けてしまった』
「・・・失礼・・・致しました」
景麒は否定する言葉も見つからず、それだけをやっとの思いで言えた。
陽子は景麒を大切な己の半身として付き合ってきた。
景麒も陽子の人柄にふれ、自分がこの方の傍にいれる事を幸せだと感じていた。
―麒麟は手放しで己の主を、愛しむ事が出来る―
そんな当たり前の感情が、この王といる時、どれほど嬉しかったか知れない。
だが、今、景麒は知ってしまった。陽子は、自分にそれを求めなかった。
『当然だ。私が、その様に仕向けたのだから』
前王舒覚は、その末期、景麒に並々ならない愛を寄せた。
当時、精神的に若い景麒は、その押し寄せる愛念に、恐怖さえ感じた。
すべてを慈しみ、包んでやる事が出来なかった。
その後、舒覚には「麒麟に恋慕し、国を傾けた王」という、悪しき印象がついてしまった。
それを知るから陽子は踏み込めない。
否、踏み込もうという感情が持てない。
景麒はそれを安堵していたのだが、今、こんなにも、それが恨めしい。
『今、あなたをお慰めする事は、私には出来ないのか?私には、あなたの心に入る余地等、
残っていないのか?』
景麒は陽子の後姿を見送りながら、その場を後にした。
「それでも私はあなたのお傍から離れる事が出来ない。それが麒麟の定め。そして、
それを恨めしいと思いつつ、まだ、あなたのお傍に入れる事を、こんなにも求めてしまう」
自身の飛び出しそうな心の叫びを、抑えようとしたのだろうか。
胸のあたりの袂をぐっと強く掴み、苦しそうに顔を歪めた景麒を、背後の陽子は
知る由もない。
了