尾崎とお蝶さま、その愛

尾崎勇(おざきゆう)
藤堂貴之(とうどうたかゆき)とは、中学からの無二の親友であり、ダブルスのコンビでもある。西高テニス部のキャプテンを務め、お蝶夫人を心酔しっきっている。
お蝶夫人とは、主役より超がつく程有名な、竜崎麗香(りゅうざきれいか)の事。あの、とても十代には思えない貫禄、縦ロールの巻き具合は、よく知らない人でも、少しは見覚えがあるのではないでしょうか。

さて、この尾崎勇という男。
藤堂さんが、昔のマンガ独特の、とんでもナイトなスーパースターな為に、どうしてもキャラが喰われちゃうんです。おしい、惜しい男です、彼。藤堂さんと尾崎さんを取るなら、私は断然、尾崎さんなんですけど。でも一番はやはり、エキセントリックなあのお方vv(その内嫌でも、大語りさせて頂きます)
そして、尾崎とお蝶婦人を語るには格好のネタとして、挙がるのが、二人で初めて行った海のシーン。私の主観入りまくりの説明ですが、以下長く語って参ります。

お蝶夫人は、岡がテニスで頭角をあらわすまでは、西高の華。テニスの女王。
「世界は麗香で回っている」という感じだったのです。周囲もそう接していたし、自身も「日本のテニス界はあたくしが……」と思っていた。
ところが、岡が出てきて、自分の領域がドンドン侵食されていくような不安がよぎった。
まず、宗方コーチは、岡の無限の才能にコーチの全てをかけた。お蝶夫人を差し置いて。
更には、周囲はお蝶夫人を取り合うのは、藤堂か尾崎かと盛り上がり、お蝶夫人もまんざらではないと思われていたのが(いや、ここははっきりした事は書いてないんです。でも、何となく、お蝶婦人はそんなかんじだったんだろうなぁと、穿った見方で)
実際、藤堂さんは岡に惹かれていった。これも寂しさを感じている。
そして、テニスでは自分の前を走る者などいないと思っていたのが、今では岡がその先を走ろうとしている。……ありとあらゆるプライドが、ボロボロになるんですよ。最初見た時は、自分に憧れを抱いている可愛かっただけの少女岡ひろみに。しがみつきたかった全てをお蝶夫人に奪われていく。

海が見たいとお蝶夫人は言った。お供しますよ、と尾崎は言う。
「一人になりたいのです」お蝶夫人、これを拒否。
「僕がいてもあなたは一人だ」
この尾崎の言葉に、お蝶婦人は何処かほっとするんです。もしや、自分の事をわかってくれるのではないかと。そこで、ぽつりポツリとお蝶夫人の独白。
ある時自分は傷ついたと心底思った(それは↑のような内容)
あれもこれも耐えがたい屈辱だと思う事もあった。しかし、自分は変わらずこうしている。
なんて事を、満ち潮を見ながら呟くのです。
尾崎は何も言わず、ただ聞いていた。
しかし、その空気は、お蝶夫人の心を知りつつ、包み込もうとする深い愛情が満ちていた。
お蝶夫人は、この人ならっと思ったのかもしてません。


……でぇ、ここからですよ。大笑いシーンは。
ちょっと高い、海の岩の上にたってたんです。お蝶夫人は。
ここから降りる際、自分の事を理解してくれそうな、尾崎にお手を触れさす行為をお許しになった。
「あたくしをエスコートしてもよろしくてよ」みたいな!!
もろ、女王様と下僕の図なんです。
しかもそのまま、二人で帰るかと思いきや、お蝶夫人はさっさと帰ってしまう。
「今回は手は触れさせて差し上げたけれど、隣に並ぶことはまだまだ許しませんわよ」(日本語めちゃくちゃ?)とでも思ったのでしょうか?
更に更に、もっと大笑いなのが、そんな女王様ぶり全開にも関わらず、尾崎は一人公衆電話で(時代だなぁ〜)藤堂に報告してんですよぉ〜〜。
思い続けた3年半で、やっと、やっと…なんつって。もう、びっくりですって。
だって、抱きしめたわけでも、ましてやチューでもないじゃん。下手したら、降りる時危なかったから、その辺にいた男(尾崎)に助けて貰っただけかもしれないじゃん。
それをさぁ、大層に大層に言うのよ。「恋をして良かった」とまで、のたまわって。
面白い、面白すぎるぅ。はぁはぁ。
それだけでも、長々語ってますが、尾崎とお蝶さまの純情物語はこれでは終らない。


ちょっと脱線ですが。
岡が羽ばたくには超えなければいけないとされる、お蝶夫人(と緑川蘭子。宗方コーチの異母兄弟))最後に、試合があるんです。
それに向けて、お蝶夫人と蘭子は血を這うようなトレーニングをする。それは、もう、とっくに実力が上になってしまった後輩に。自分たちを限界まで強くして、それを堂々と打ち負かして欲しいと。
しかし、お蝶夫人は怪我で入院。そして、永遠に先送り。ちなみに蘭子とは試合の末、岡の勝ち。
お蝶夫人が入院していると、尾崎がどうして何も言ってくれなかったのだとばかりに、切なげに病室に飛び込む。
(俺はやっぱり、お蝶さまにとって箸にも棒にもかからない存在なのか)
と、思ったのか思わないのか分かりませんが、とにかく尾崎は心配で、こういいます。

「あなたの強さが悲しいのです」

すると、お蝶夫人は「海が支えだった」という。

前も触れましたが、多分これでお蝶婦人は全てを語った気でいますよ。
でも、全然わかんないけど。しかし、分かんないなりに考えてみました。


これまで自分が歩いていた表舞台を岡に渡し、全て岡をサポートする為に回った、お蝶夫人。
「世界は麗香で〜」だった彼女には、なかなか辛かった事もあっただろう。
しかし、海での尾崎との触れ合い、アレだけを胸に抱いて頑張ってこれた。
それを伝えようとしたのかなぁ。
でもって、ただねっとりと追いかけてきただけではない尾崎君は、お蝶夫人の「皆まで言うな」な言葉を上手事理解し、見開き二ページまたいで、薔薇なんかも飛ばして、感動に打ち震える。

「藤堂…息が詰まりそうだ俺は!」って……。
ここでも、藤堂に報告なのかよ(心の中だけど)


もうもう、あまりにも、オブラートにオブラートに包むんで、よく分からなくもなるんですが。
とにかく純情一直線の尾崎とお蝶夫人。
実はこの二人が一番恋愛ベタなのかも。見た目は派手だけど。そのギャップが面白いかもしれませんね。


―――等と、盛り上がっておりましたら、とある方からこんな突っ込みが。

思ったんですよ。この二人(尾崎とお蝶夫人)はやっぱりいつかは出来上がるんでしょうか?
そうしたらですよ?尾崎は果たして、その瞬間に耐えられるのか?


その瞬間って言うのは、大人な皆様にはもうご想像のつくアレですね。(やぁキスかもよ。と、この編集作業をしている今、思って恥ずかしくなった。でも、当時は私そっちしか思い浮かばず)
又馬鹿で無責任な妄想を巡らしてしまった訳で・・・。
と、言う事で、次回「尾崎とお蝶さまの初○験物語」でお会い致しましょう。お宝作品もアリ

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