眠れぬ夜


「蒿里が眠るまで傍にいよう」

そう言ってあなたが頭を撫でる時、僕は胸が締め付けられるほど切なくなるんだ。
あなたしか見えなくなった僕は、その声音が どうにだってとれてしまう。
冷たい位静寂な 夜の王宮。
あなたは遅くまで僕の臥牀の傍らに座り、僕が眠るまで付き合ってくれる。
あなたには まだまだ幼く見える僕が、寂しくならない様に。

それは誘っているの?

僕は期待していいの?

月は黙って僕らを照らす。


日ごと募る熱き想いを隠さなければ、
長い眠れない夜も僕の好きな様に操れるのだろうか?


「…手を…握っていて下さい。驍宗様」


あなたが好む幼子の様な声音を、僕はあえて発する。
そうする事で、僕はあなたの懐に容易に入っていけるのだ。
例え それが僕の本当に望んでいる事とは遠く離れていようとも。
今この瞬間、その紅玉の瞳が独占出来るなら それでいい。
でも。
あなたの温度が伝わると僕は欲張りになる。
(いつく)しむ様に暖かく握って下さるその手を僕は。
汚してしまいたくなるんだ。
柔らかく微笑んでみせるその(つら)の下で僕は。
あなたを組み敷いて、欲望のすべてを吐き出したくなるんだ。


日ごと募る熱き想いを一言でも伝える事が叶うなら、
長い眠れない夜が、僕の描いた夢物語に近付けるのだろうか?


「どうした蒿里?具合でも悪いのか?」

熱に浮かされるが如く紅玉の瞳にとらわれてしまった僕を。
何も知らないあなたは、心の底から心配する。
いつもは圧倒的な王の威厳に満ちたあなたの、僕だけにふっと見せる、優しいその表情。

それは誘っているの?

僕は踏み込んでしまっていいの?

月は妖しく僕らを照らす。


了 


これは「Cherryblossom Starwberrys'」様が一周年を迎えた際、丁度企画もされていた事もあって、
おずおずと送りつけた物です。ここは、どのCPも魅力的ですが、私の一押しは何と言っても、
泰麒×驍宗!!もう、もう、さっくりと嵌りました。
葉月様、私にその面白さを教えてくれて有難う。

これを見て「マジでやられる500日前ですね」と仰ってくれる、葉月様のセンスが好きだ。(元ネタがわかる人、握手しましょう)
素直そうで従順そうな泰麒が、心の中で虎視眈々と我が主の全てを欲したいと狙っているって言うのも、アリではないかと思うのですけど、ねぇ。
私にしては珍しく、短く詩のような感じで纏めました。
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2004.8.初稿


素材提供 MILKCATさま
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