と、言う訳で、「これ、浩祥?」な、おまけをお届けしました。うーん、馴れ初めの過程も無く、いきなりの設定でスイマセン。それに、私が走りがちな、まだお互い相手の気持ちは気付いてないというパターン。
「おまけ」という事で今回は見逃して貰って、次回こそは、しっとりと、しっぽりと、な二人に挑戦したいです。
しかし、ますます浩陽モノが書けていないんじゃないかな、アタシ。ふぇ、大好きなCPの一つなのにぃ〜。
でも、まぁ、私が書かなくても、沢山の方が発表してるんで、別にいいけどね。
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2006.7.7初稿

素材提供 MILKCATさま
禁無断転写

おまけ 浩瀚⇔祥瓊


全室に控えていた祥瓊は、陽子と藍滌が部屋から出て行くのを見かけた時、殊更慌てた。

「ちょ、ちょ、ちょっと陽子。あっ、主上。恐れながらお聞き致しますが、今から何を

しようと?」

陽子は藍滌の手を引っ張り、もう片方の人差し指を立て、唇に持っていった。

そして「しぃー」と小さく息を吐き、片目を閉じる。

「ええ!ちょっと、もう、何なのよ。それは拙いでしょうが」

もはや、自分の立場を忘れ、私的な時に陽子に接する言葉になってしまっている事にも気付いて

いない。

藍滌を見れば、彼は少々困惑しながらも

「許してくれまいか」

と言って、はんなり笑った。

二人は藍滌が騎乗した趨虞に乗り夜空を飛び出した。

「祥瓊、後は任せたから」

陽子は振り向き手を振って、満面の笑みを浮かべている。

「まっ、任せたって何よぉー。って、あーあ、行っちゃった」

祥瓊は窓辺に佇み、二人を見送るしかなかった。

取り合えず、元いた部屋に戻ると、今回の逢瀬につき合わされている、別の女御が声を掛けた。

「何かございましたか?」

祥瓊は、ひぃっと、全身に冷水を浴びせられたような心持になったが、直ぐ体制を整え返事した。

「別に、何でもないわ。主上と氾王君はお休みになられたようよ。あなた。当然でしょうけど、

絶対部屋は入ってはいけないわよ。次にお支度の為向かうのは、早朝。いいわね?何せ二人は、

久しぶりの逢瀬なんだから」

陽子と藍滌がここにいない事を、慌てて言いつくろっている為か、自分が相当露骨な事を言って

いる事に、祥瓊は気付いていない。

が、それを聞いた女御は、みるみる顔を真っ赤にし、ただひたすら首を縦に振るばかりだった。

聊か小鼻が膨らんでいるようにも見受けられる。

何とかその場を治めた祥瓊は、どっと疲れた身体を引きずり、すぐ陽子の部屋にいけるようにと

今回用意された、仮の
独房(へや)に向かおうと、回廊を曲がった。

と、そこで待っていたのは、浩瀚であった。

浩瀚は、祥瓊に気付き、静々と歩み寄って声を掛ける。

「ご苦労であった」

「ええ、まぁ、何とか。所で浩瀚様は何をしていらっしゃったのでございますか?」

『まさか、陽子が心配で監視に来た訳ではないわよねぇー』

浩瀚が陽子対する接し方を見ると「もしや、この方は…」と思わせる素振りもあって、

祥瓊の興味は尽きない。

『まぁ、私にとっては如何でもいい事なのでしょうけど』

そう思いながらも、浩瀚のその様子を見ると、何故か虚しさが心広がる祥瓊であった。

そんな祥瓊の気持ち等、気付きもしない浩瀚は、静かに笑う。

「まだ、朝まで時間がありましょう。如何ですか?私に少し付き合いませんか?」

祥瓊の心は至極粟立つ。それを隠すように早口で捲し立てた。

「そうして、二人の様子をお聞きになりたいのでございますか。全く、主人思いが熱心な事で」

『あっ、何で、そんな言い方しか出来ないのよ、私は』

祥瓊が自分が言った言葉に、自分で腹を立てていると、浩瀚はふっと笑みを返してこう話した。

「私はただ、祥瓊を労おうと思ったのだが。…迷惑だったかな」

そうして祥瓊を見つめる瞳の、何と憎らしくも愛しいことか。

「べ、別に、迷惑ではございません。お誘い有難うございます」

祥瓊は深々とお辞儀をした。そして、浩瀚の一歩手前を静かに歩く。

「…どうすれば気付いて貰えるのか」

浩瀚は小さく息を吐き、自嘲気味に笑った。

その呟きに祥瓊は気付いていない。